シンガポール共和国(シンガポールきょうわこく)、通称シンガポールは、東南アジアの主権都市国家かつ島国である。マレー半島南端、赤道の137km北に位置する。同国の領土は、菱型の本島であるシンガポール島及び60以上の著しく小規模な島々から構成される。
同国は、北はジョホール海峡によりマレーシア半島から、南はシンガポール海峡によりインドネシアのリアウ諸島州から各々切り離されている。同国は高度に都市化され、原初の現存植生はほとんどない。同国の領土は、一貫して埋立てにより拡大してきた。
概要
同島嶼には2世紀に定住が始まり、それ以降は一連の現地の帝国に属した。現代のシンガポールは、1819年にトーマス・ラッフルズがジョホール王国からの許可を得て、イギリス東インド会社の交易所として設立した。1824年、英国は同島の主権を取得し、1826年にはシンガポールは英国の海峡植民地の1つになり、人口が加速度的に増大した。第二次世界大戦の間は日本により占領され、1963年にシンガポールは英国からの独立を宣言し、マレーシアを形成するため他のかつての英国領と結合した。この2年後、シンガポールは全会一致の議会制定法によりマレーシアから追放された。それ以来、シンガポールは急速に発展し、アジア四小龍の1角として認知されている。
シンガポールは、貿易、交通及び金融の中心地の一つであり、世界第4位の金融センター、外国為替市場及び世界の港湾取扱貨物量で上位2港のうちの1港である。世界銀行の『ビジネス環境の現状』の報告書では、シンガポールは9年連続で世界で最もビジネス展開に良い国とされた。同国の国際化及び多様化された経済は貿易に大いに依存し、中でも製造業は2013年における同国のGDPのうち30%を計上した。購買力平価説の観点から、世界第3位の一人当りの国民所得を有するが、世界有数の所得格差も存在する。シンガポールの国債は、2015年9月現在、3大格付機関すべてから最高の格付けを受けている4カ国のうちの1つである。
人材開発に積極的なことで知られ、国際ランキングでは、教育、医療、経済競争力において高位に順位付けされる。多文化主義及び文化多様性があり、550万人の人口の38%は永住者及びその他外国籍の人である。シンガポール人は華人 (74.1%)、マレー系 (13.4%)、インド系 (9.2%) 及びユーラシア人に大別でき、大部分は2言語使用者であり、共通語及び第2母語として英語を使用する。
シンガポールは、一院制議会政治のウェストミンスター・システムでヘゲモニー政党制の議会制共和国である。1959年の自治開始以来、人民行動党は全ての選挙で勝利してきた。抑制された市民的自由及び政治的権利並びに低水準の言論の自由を加味し、同党の支配によりシンガポールは準独裁政治体制に分類されている。東南アジア諸国連合 (ASEAN) 原加盟国5箇国のうちの1国で、アジア太平洋経済協力 (APEC) の事務局設置国でもあり、東アジアサミット、非同盟、イギリス連邦加盟国である。シンガポールの急速な発展は国際情勢において多大な影響力を同国にもたらし、複数のアナリストが同国をミドルパワーに分類している。
シンガポールは事実上1つの都市から構成されているため、シンガポール国内には地方自治体が存在しない。このため、首都も建前上はシンガポール市となっているが、実際には首都(ならびにシンガポール市)は存在しない。
国名
国名はサンスクリット語で「獅子」を意味する「シンハ(si?ha)」に由来する。
国語はマレー語だが、公用語が4言語あるので正式名称も各言語ごとにある。
Republic of Singapore (英語:リパブリック・オヴ・スィンガポー) 新加坡共和国(標準中国語:シンチャーポー コンホークオ、?南語(福建話):シンカーポー キョンホーコック、広東語:サンカーポー コンウォークオック、 ) Republik Singapura (マレー語:リプブリク・スィンガプラ) ??????????? ???????(タミル語:スィンガップール・クディヤラク) 通称はSingapore (英語)、新加坡(中国語、旧称:星加坡、略称:星洲、星港)、Singapura (マレー語)、??????????? (タミル語)。漢字表記は新加坡だが新嘉坡と表記されることもある。略称は星が用いられるが、これは、第二次世界大戦前に星加坡、星港、星洲などの漢字表記が用いられたことに因む。
マレー語の「スィンガプラ(Singapura)」を直訳すると「ライオンの町」となるため、Lion Cityの愛称で呼ばれる。また、シンガポール原産のネコの種類名、“シンガプーラ”はマレー語の発音が由来である。
日本語の「シンガポール」は、英語表記をイギリス英語発音を真似てローマ字読みしたものである。また、第二次世界大戦で交戦国イギリスの領土であったシンガポールを占領した日本は、1942年2月に「昭南島」(昭和に手に入れた南の島)と改称した。このことから、“昭”と略す場合もあった。
歴史
地理
東南アジアのほぼ中心、赤道直下の北緯1度17分、東経103度51分に位置する。北のマレー半島(マレーシア)とはジョホール海峡で隔てられており、マレーシアとは経済交流も盛んである。シンガポール・チャンギ国際空港は島の東端に位置する。シンガポール島の南に隣接するセントーサ島は、リゾート地としての開発が進んでいる。
63の島からなり、もっとも大きな島はシンガポール島(東西42km、南北23km)である。国土の最高地点はシンガポール島にあるブキッ・ティマ(163m)。シンガポール島には沖積平野が広がる。他の島はいずれも小さく、44の島は面積が1平方kmを下回る。国土面積は世界175位で、東京23区とほぼ同じ広さである。人口密度は世界第2位である(第1位はモナコ公国)。
以前はシンガポール川沿いには倉庫が立ち並び、アジア各地を行き来する無数の貿易船が停泊する貿易港として栄えたが、やがて放棄され時代の名残となっていった。現在は多くの地域がレストラン街やオフィス街に改装されており、観光客だけではなく、地元民も多く立ち寄る地域となっている。 シンガポールには山と呼べる高さの山はないため、川の流れは非常に緩やかで、人々が川で蟹や魚を採る光景をみかけることもあるが、流れが緩やかなこともあり、水質は濁流であまり良くない。ただ夜になると、橋などがライトアップされ、華やかな飲食街の灯りと観光船の光とともに、川の景観を一変させる。
気候
赤道直下に位置するため、一年を通じて高温かつ多湿である。モンスーン地帯に含まれるが、雨季と乾季の区別ははっきりしないものの、北東モンスーンの影響により、11月から3月にかけて降水量が多い。5月から9月は南西モンスーンのために、1回当たりの雨量が増え、強風に見舞われる。この南西モンスーンに乗って、隣国インドネシアスマトラ島の焼畑農業や山火事の煙が流れ込み、ヘイズと呼ばれる煙霧になることがある。インドネシアの乾期にあたる8月?11月ごろになると大気汚染が特に酷くなり、健康への被害が懸念されるレベルとなっている。
ケッペンの気候区分によると、乾季のない熱帯雨林気候 (Af) に分類される。首都シンガポールは標高5mであり、年平均気温は27.4度、1月の気温は26.4度、7月は27.9度である。11月から1月にかけては雨季の影響もあり比較的涼しい。年平均降水量は2087.1mm。
水資源
高低差の少ない狭い国土では水源に乏しいため、国内の多数の貯水池と隣国マレーシアからの輸入した原水で水の需要に応じてきた。水道水は国内の貯水池だけでは到底賄い切れないため、隣国マレーシアよりジョホール海峡を渡るパイプラインで原水を購入している(パイプライン3本中2本がマレーシアからの原水で、1本が浄水後マレーシアへ供給される水道水)。
必ずしも良好な関係とはいえない隣国のマレーシアが、1998年には「シンガポールへの水の供給を停止する」という威嚇的な発言で圧力をかけてきたことや、21世紀に入ってからは「水の価格を100倍へ上げる」との要求に対応を迫られるなど、マレーシアからの水輸入の契約期限である2061年に向け、水問題はシンガポールの大きなアキレス腱となっている。
同国政府はこうした資源問題への根本的な解決策として、2003年から日本の逆浸透膜を使った海水淡水化による高度濾過技術を導入して、国内の下水を再生処理し、飲用水にも利用可能とする「ニューウォーター」(NEWater)計画を開始しており、2011年には、国内の水需要の30%をこの再生水で賄うとしている。
NEWaterの工場は、MRT・チャンギ車両基地に隣接しており、見学ツアーも設けられている。またシンガポール水処理大手のハイフラックス社の技術を使い、マリーナ湾の湾口をせき止めて淡水化し、将来飲用に供するための可動堰式ダム・「マリーナ・バレッジ」も完成した。この貯水池では、シンガポールの水需要の1割を賄うことを目標にしている。
政治
1957年に「シンガポール市民権法」が成立し、18歳以上に選挙権が与えられる。投票は義務制。1959年には初の普通選挙が行われ、この年の総選挙から無理由の棄権には罰金が科された。義務制は現在(2010年代)も継続している。1959年から1984年総選挙まで小選挙区制であったが、1988年から小選挙区制に並列してグループ選挙区制度が導入された。
民族暴動を機に、マレーシアから追い出されるように独立した経緯から、国内民族問題に敏感であり、民族対立を煽るような言論・表現は煽動法(英語版)や宗教調和維持法(英語版)などによって、厳しく取り締まられる。煽動法では、人種憎悪にとどまらず、シンガポール政府への不満表明も刑事規制対象とされ、活動内容によっては5年以下の懲役または5000ドル以下の罰金、出版差し止めが科される。2016年3月には運営サイト内で「憎悪をあおる扇動的な傾向があった」として、日系オーストラリア人の女性アイ・タカギ氏を逮捕し、ウェブサイトを閉鎖、禁錮10ヶ月の実刑判決を言い渡した。
一党優位政党制
建国以来、一貫して人民行動党が議会議席の大多数を占めており、一党優位である。このため、シンガポールは典型的な開発独裁国家であり、典型的な国家資本主義体制である。労働者党などの野党の存在は認められているが、その言論は大きく制限され、国政への影響力は少ない。
21歳以上の全国民が選挙権・被選挙権を持つ普通選挙制だが、野党候補を当選させた選挙区民は、徴税面、公団住宅の改装が後回しにされるなど、報復的な措置を受ける。
シンガポール政府による選挙干渉やゲリマンダーは日常化しており、普通選挙は外国からの批判をかわす為の『形式的な制度』という色合いが濃い。一般市民の政治への関心は低いが、経済的・政治的安定を享受しているため、不満は少ない。ただ、2011年の総選挙では、人民行動党の得票率は60.1%と独立後最低を記録しており、若者を中心に不満を抱く層が増えているとみられる。。また、ギャラップの国民幸福度調査では、調査された148カ国のうち、シンガポールは最下位となった。
民主主義指数によると、シンガポールは民主制と専制の中間にある「ハイブリッド」と評される。一方、トランスペアレンシー・インターナショナルの「腐敗認識指数」によると、公職における汚職の少なさでは、世界トップクラスであり、欧米以外では最も政治腐敗の少ない国である。フリーダム・ハウスは、レポートの中で、自由度について「部分的に自由」、報道の自由や言論の自由については「全然自由でない」とし、民主選挙は行われていないと報告している。
国会
国会は一院制。任期5年。解散あり。定数は選挙区選出83、非選挙区選出0-6、任命9。非選挙区選出は野党懐柔のために設けられた枠で、選挙区選出枠以外は、憲法改正案、予算案の議決権を持たない。
選挙区は当初は単純小選挙区制であったが、現在は小選挙区9、定数4-6の集団選挙区(英語版)14(75議席)となっている。集団選挙区では、最多得票の政党が全ての議席を獲得する。集団選挙区の候補者リストには少数民族を含める必要があり、無所属での立候補はできない。人民行動党にとって有利な制度である。
選挙
1968年から1981年までの13年間は、国会の全議席を人民行動党が占めていた。その後の総選挙でも1984年定数79で人民行動党77・野党2、1988年定数81・人民行動党80・野党1、1991年定数81・人民行動党77・野党4であった。
1997年総選挙ではチェンサン選挙区(定数5)で野党が45.2%の得票を集めたが、政府はすかさずゲリマンダーを行い、選挙区割りを変更、野党の得票を分散させた。集団選挙区は野党が定数一杯の候補者を揃えられずに擁立を見送る選挙区が多い。少数民族を候補に含めることは、表向きは少数民族の保護だが、少数民族の候補を確保しにくい、野党の擁立を妨害する作用もある。そのため、2001年総選挙では人民行動党が過半数の55議席で無投票当選を決めている。選挙のたびに小選挙区は削られ、集団選挙区の割合が増えている。集団選挙区の定数も3から4、そして現行の5-6と増やされている。
供託金は候補者1人当たり13000シンガポールドルで、供託金没収点は有効得票÷定数の8分の1である。
法律
シンガポールの法体系はイングランド法を基礎としている。主要な法分野(特に行政法、契約法、衡平法および信託法、財産法、不法行為法)は、その一部が立法により修正がなされたものの、主に判例法の体系によっている。刑法、会社法、家族法を含む他の領域は、その性質上主として制定法となっている。
シンガポールにおける判例がない場合はイギリスにおける判例法を参照するか、シンガポールの法律のモデルとなったイングランド法の解釈を援用することがある。最近においては、イギリス本土のアプローチが不適当であるときに、同じ英連邦の主要国であるオーストラリアやカナダの判例を参照する傾向が強く、またイギリスの判例に依拠せずシンガポールの裁判所が独自の判断を下すケースも増えてきているという。一部のシンガポールの法律は、イギリス法を継承したものではなく、他の法体系に起源を有するものがあり、それらの法律は最初の立法時の経緯を斟酌し母国法を参照する。例えば、証拠法や一部の刑法の取り扱いはインド法に基づいて解釈されることがある。憲法解釈については、他国の例を参照することを嫌い、シンガポール国内の政治的・社会的状況を斟酌し解釈される。
刑事法や取締法規については一般的にいって厳格であり、裁判所の許可のない拘留を認めることや、イギリス植民地時代に制定された、組織について政府が管理権を有する結社法が未だに存在し、身体刑と死刑が実施されている。
死刑制度
世界的にも厳しい死刑制度を維持している。人口あたりの死刑執行件数は正確な統計がある国としては最も高い。特に、麻薬に関する犯罪については厳しく、麻薬密輸で有罪になった時は死刑が適用されるため、外国人の麻薬密売業者が死刑になった事例が存在し、死刑廃止国との間で外交問題に発展したことがある。死刑の方法はイギリス式の絞首刑であり、死刑執行人が存在する。
ただし、近年では一部の厳しい規則は改定されることもあり、麻薬密輸で有罪になった場合に必ず死刑が適用される条文については、2012年に廃止されている。
同性愛に関する法律
シンガポールのLGBTに対する姿勢は明確である。男性間の同性愛行為は違法とされ、最高で無期刑が科されることとなる。女性の同性愛については特に禁止されていない。
仲裁
国際取引に関する紛争の解決方法としては、一般に訴訟よりも仲裁が広く用いられているが、アジアではシンガポールの仲裁、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)が広く利用されている。このことは、シンガポール、さらにはイギリス法系の法律家にとって、巨大なリーガルマーケットを意味しており、シンガポールにとっては、国家的な戦略と位置付けられる。 2015年にはシンガポールへの申立件数が271件と5年で4割増え、主に外国企業同士の案件を扱う機関では香港の国際仲裁センター(HKIAC)と並びアジア首位になった。2011年にアメリカ合衆国・コンゴ民主共和国の間での仲裁判断について香港最高裁が中国本土政府の見解を仰いだことから、HKIACの独立性に対して不信感を与えたとされる。
ラッシュアワー対策
シンガポール陸上交通庁のLTAは2013年4月、MRTの平日始発から午前7:45までを完全無料化し、乗車運賃を浮かせたい人の乗車時間をずらすことで、通勤時間帯のラッシュアワー混雑を緩和する政策を打ち出した。またタクシーでは朝晩のラッシュアワーでは25%の割増料金を設定するなど、加算料金を課している。
行政区画
警察
警察 (Singapore Police Force) 特殊部隊 (Police Tactical Unit) 戦術部隊 (Police Tactical Team) Singapore Police Force Good Service Medal Singapore Armed Forces Military Police Command Police K-9 Unit Singapore Police Force Crisis Negotiation Unit 情報機関
シンガポール JID (Joint Intelligence Directorate) – 統合情報本部 G2-Army ISD (Internal Security Department) – 内務省国内公安部 SID (Security and Intelligence Department) – 公安・情報部 軍事
兵力は陸軍50,000、海軍9,000、空軍13,500の計72,500名。徴兵制により男子に2年間の兵役を義務付けており、兵役終了後は予備役に編入され、有事の際は総動員体制となる。2006年の軍事予算は100.5億シンガポールドルで、全歳出に占める割合は22.5パーセントである。
陸軍はイギリス製センチュリオン戦車約100両(旧式)、およびドイツ製レオパルト2戦車(現在132両)を保有している。海軍は、チャレンジャー級潜水艦(スウェーデン海軍の旧シェーオルメン級)を4隻、ラファイエット級をベースとして設計されたフォーミダブル級フリゲートを6隻、ヴィクトリー級ミサイルコルベットを6隻、フェアレス級ミサイル艇6隻、哨戒艇を23隻、そして戦車揚陸艦4隻を保有する。空軍は米国製戦闘機F-5を45機、F-16C/D (Block52) を62機、F-15SGを保有し、2010年以降は第五世代のステルス戦闘機F-35が順次導入され、F-5を置き換えていく予定である。
国土が狭小なこともあり、演習・訓練はオーストラリア等の国外地域でも積極的に行われている。タイやインドネシア、フィリピンなどの近隣諸国のように反政府ゲリラなどによる攻撃は存在しないが、その質、数とともに国土に対して十分である。
対外軍事協力
イギリス植民地時代に同国の要塞であった歴史的経緯から、現在もイギリス軍と密接な関係にある。イギリスは1967年にスエズ以東からの撤退を宣言したが、これに対応するための枠組みとして、1971年にシンガポール、マレーシア、ニュージーランド、オーストラリアとともに五ヵ国防衛取極めを締結した。当初は、防空システムに関する協力から始まったが、後に空軍だけではなく、海軍の合同演習も行われるようになった。
冷戦を通じてアメリカ軍との関係も深まっており、1990年にはアメリカ軍によるシンガポール国内施設の使用に関する覚書を締結した。シンガポール軍の装備も、アメリカ製が多い。特に空軍の歴代主力戦闘機は、アメリカ製で占められてきた。F-35戦闘機の開発計画(統合打撃戦闘機計画)においても、最も低いレベルではあるが、優先的に輸出枠を確保できる“Security Cooperation Participation”として参加している。また、2013年にはアメリカ海軍の最新鋭艦艇である沿海域戦闘艦のローテーション配備が発表されている。
このほか、台湾(中華民国)との間で「星光計画」と呼ばれる協力関係が1975年以来続いている。これは、シンガポールの国土が狭いため、当時のリー・クアンユー首相と蒋経国総統の間で、シンガポール陸軍部隊の訓練を台湾国内で行うことなどを取り決めたものである。台湾と対立を続ける中華人民共和国もシンガポール軍に海南島の訓練施設の提供を申し出たが、シンガポール側はこれに応じていない。さらに、シンガポールとフィリピンが「台湾有事」の際に、台湾の防衛に協力するという「敦邦計画」が存在するとの報道もある。ただし、リー・クアンユーは台湾に武力侵攻の場合は武力衝突を避けるべく中華人民共和国は2週間先に事前通告するよう要求してる。また、中華人民共和国とは2009年、2010年、2014年、2015年に共同軍事演習を行ってる。
近年は、アメリカ、フランス、ブルネイ、オーストラリアからも同様の協力を取り付けているが、戦車部隊や防空システムの演習や両国海軍艦艇の相互訪問も行われるようになった。
国際関係
旧宗主国のイギリスや、太平洋地域での有力国である日本・オーストラリアなどと貿易を通じ密接な関係を持つ他、隣国であるマレーシアやインドネシア、タイ王国などのASEAN諸国とも密接な関係を持っている。
対マレーシア関係
隣国で元々は同じ国であったマレーシアとは、領土や開発問題、欧米諸国へ対する姿勢などでたびたび衝突しており(軍事的な衝突ではなく、あくまで外交上のもの)、心理的・物理的に密接ながら複雑な関係といえる。
ASEANの一員でありながら、欧米諸国(と日本)との貿易や金融に過度に依存した都市国家である故に、主な「顧客」である欧米諸国(キリスト教国)におもねる中立的な言動を取ることが多いため、マレーシア以外のほかのアジア諸国(おもにイスラム教国)とも、幾度にわたり外交的な衝突を繰り返している。
対日関係
日本との外交関係はおおむね良好である。シンガポールは日本にとって初めての自由貿易協定締結相手国でもある(JSEPA)。日本-シンガポール間の貿易について、シンガポールを原産地とする貨物については特別な関税率が適用されており、将来的には関税撤廃スケジュールに基づいて両国間の関税は撤廃される予定である。2016年は外交関係樹立50周年となり、SJ50祭などが開催された。
経済
IMFの統計によると、2015年のシンガポールのGDPは2,927億ドルであり、フィリピンとほぼ同じ経済規模である。同年の一人当たりのGDPは52,887ドルである。また同年の一人当たり国民総所得(GNI)は52,090ドルで、アメリカ合衆国に次ぐ世界第9位。
世界屈指のグローバル都市であり、アメリカのシンクタンクが2017年に発表した総合的な世界都市ランキングにおいて、ロンドン、ニューヨーク、パリに次ぐ世界4位と評価された。国際競争力が非常に強い国であり、2016年の世界経済フォーラムの研究報告書において、スイスに次ぐ世界2位の国と評価された。アジアを代表する金融センターの一つであり、2017年9月には、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界4位の金融センターと評価された。2015年の勤労者世帯の平均世帯月収は11,510シンガポールドルであり、東京都の勤労者世帯の平均を大きく上回っている。
通貨はシンガポール・ドルが使用されている。ASEANの原加盟国で、2002年には日本と「新時代経済連携協定」に調印し、関税の撤廃と両国間における物品・人・サービス・資本・情報の移動の自由度向上をはかっている。20世紀末から急速な経済成長が続いており、熱帯地域では珍しく経済力がある地域である。
租税
法人税と個人所得税の両方は、ほかの多くの国と同様に累進課税方式を採っている。住民税や事業税のような地方税は存在せず、すべて国税となる。シンガポールは政策的に低い税率と大胆な税制優遇を打ち出していることで知られ、同国への外資企業への誘致に重要な役目を果たしている。2014年度の個人への税率で日本と比較すると、例えば年収1億円の場合、日本では所得税以外も含めた概算で納税額の合計は約5,500万円だが、シンガポールでは1,500万円で済むため約4,000万円節税できる計算になる。
税務当局はInland Revenue Authority of Singapore (IRAS) と呼ばれ、2015年の実績では法人税31%、個人所得税21%、消費税(GST)24%、固定資産税10%という内訳で、過去最高額となる計434億シンガポールドルを徴収した。
シンガポールは積極的な税制優遇措置を取りながら透明性を確保していることでも知られ、OECDによる評価では「国際基準に概ね適合」という評価とされている(2016年4月現在)。
法人税は、日本のような自己申告課税方式ではなく賦課課税方式であり、納税額の確定は納税者の提出する申告書類などによって、IRASという税務当局が行う。このため税額の確定までに通常は2-3年、納税額や条件に確認するべき点があればさらに数年を要する。税務調査官が実地調査することはほとんどない。
現在は17%とシンガポール所得税法で定められているが、実際には部分免税制度などの優遇措置などを受けることで実質的な税負担は10%程度にできる企業が多いとも言われる。またシンガポールでは、交際費は損金として認められている。
個人所得税は、前年分の課税を当年に行うため、所得期間と賦課年度はそれぞれ前年と当年となって1年ずれて表記される。個人所得税の源泉徴収制度はないが、企業従業員が前年度の収入分に対して当年での分割納付を行う場合は、税務当局が企業に指示を出して給与から控除される制度が存在する。
2003年1月1日に、消費税(付加価値税、GST、Goods and Service Tax)は4%から5%に上げられ、2007年7月1日からはさらに7%になった。日本のような記帳方式ではなく、インボイス方式を採っているため、課税業者はすべての取引について「Tax Invoice」と呼ばれる税額票を発行する。住宅用不動産の売買、金融商品サービスの提供、輸出取引、サービスの輸出、企業そのものの売買、三国間取引、保税倉庫内取引、(S$1百万/人以下の)個人間の取引を除く、すべての売買について課税される。
外税表示方式と内税表示方式が混在しているために、旅行者などの外国人は、飲食店や物品やサービスの購入時に注意が必要である。
不動産取得税は存在せず、不動産の所有に対して比較的高率での固定資産税 (Property Tax) が毎年課税される。不動産取得時には印紙税が1-3%程度かかる。
1967年から何度か改訂されてきた経済拡大奨励法 (Economic Expansion Incentives Act) に基づき、シンガポールにとって特に有益な事業への企業の新規参入と投資を奨励するために「パイオニア企業」(Pioneer Industries)といった分類を設けて、税制上での優遇措置が図られている。これは最初の生産開始日から起算して5-10年間の全額租税免除という適用企業にとっては極めて有利なものである。
老年年金および医療貯蓄として、中央積立基金(英語版)が強制的に個人の収入などより徴収される。たとえば、50歳以下では毎年の給与と賞与の総額に対して雇用者14.5%と従業員20%、計34.5%の掛金を政府に払い込まれ、個人ごとのCPF口座に貯蓄される。この貯蓄からは医療費支払い、住宅購入などの特別な用途の原資となり、残りは退職後の生活安定に使用される。
シンガポールでは、多くの家庭で外国人メイドを雇用している。 メイドの雇用には、雇用主が毎月200-295シンガポールドル(1シンガポールドルは2015年3月4日現在87.64円なので、17528円?25854円)のメイド税を払う義務がある。この金額は多くの場合、メイドが受け取る給料よりも高い。 外国人メイド控除という制度があり、就業している女性などが外国人メイドを雇用した場合、メイド税の2倍に相当する額を、所得控除することが出来る。
産業
東南アジアと東アジア、ヨーロッパや中東、オーストラリアを結ぶ交通の要衝であるため、東西貿易の拠点となって古くから繁栄し、海運産業や航空産業が発達した(ゆえに国内最大の企業はシンガポール航空である)。独立後は積極的な外資導入により、重工業を中心とする工業化政策をとり、東南アジアでは最大級の工業国に成長している。
都市国家であるため、国内の人口や消費の規模は小さいものの、先述の税制優遇や優れたインフラ環境、また英語や中国語が話せる人材の多さから、香港と並び欧米諸国の多国籍企業のアジア太平洋地域の統括拠点が置かれることが多く、1990年代頃から東南アジアにおける金融センターとして不動の地位を保っている。
地元企業
地元の世界的企業としては、シンガポール・テレコムやシンガポール航空などがある。近年は政府を挙げてIT分野と観光分野の振興に力を入れているものの、製造業などでは「見た目とは違って借入れが多く、経済的に困窮している企業も少なくない」と中華民国の元総統である李登輝は分析している。 中小企業はSMEと呼ばれ政府機関SPRINGによって奨励されており、全企業数の99%、GDPの50%近く、雇用の70%に貢献している。
観光
「ガーデン・シティ」とも呼ばれる美しく整備された国土と、海運上極めて重要なマラッカ海峡のそばにある上、東南アジア各地を結ぶチャンギ空港もハブ空港として非常に重要な役割を果たしているため、観光面では域内の他国に比べてアドバンテージがある。2012年にマスターカードが公表した統計によると、ロンドン、パリ、バンコクに次いで、世界で4番目に外国人旅行者が多く訪れる都市である。ラッフルズ・ホテルやグッドウッド・パーク・ホテル、ザ・フラトン・ホテル・シンガポール、マリーナ・ベイ・サンズなどの世界的に有名なホテルも集積している。
政府と民間の協力のもと、人工的な観光資源開発を進めており、一環として、セントーサ島にテーマパーク『ユニバーサル・スタジオ・シンガポール』や、「リゾート・ワールド・セントーサ」が賑わいを見せている。「リゾート・ワールド・セントーサ」の投資額は52億シンガポールドルに上るとされる。 世界初の夜間型動物園のナイトサファリやシンガポール動物園、植物園ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなどのテーマパークは、広く自由な空間で楽しめるだけでなく環境保全や資源再利用を訴える場になっている。
2010年2月1日には、「リゾート・ワールド・セントーサ」のショッピングモールが開業し、2月14日にシンガポール初となるカジノが、3月18日には『ユニバーサル・スタジオ・シンガポール』が同施設内にオープンした。他にも、世界最大となる水族館Marine Life Park が2010年中には完成する予定で、2011年には美術館、ウォーター・パークなどが完成した。。
マリーナ・エリアでは、世界最大の観覧車「シンガポール・フライヤー」が2008年3月に完成し、巨大カジノリゾート施設「マリーナベイ・サンズ」が2010年4月に開業した。2008年9月には市街中心部の公道を利用してF1シンガポールグランプリが開催された。これはF1初の夜間開催のレースでもある。
政府公認の風俗街としても知られる北東部のゲイラン地区は、その性質から避ける観光客も多いが、1970年代からほとんど再開発が行われていないために、昔ながらの歓楽街、カラオケ、安宿街、外国人労働者居住地区などが集まっており、ゴミひとつ落ちていないマリーナ・エリアとは全く違った東南アジア文化らしい街並みが残っている。
建築
シンガポールの建築は非常に多種多様である。国土が狭く、慢性的に土地が不足していることから、歴史的な建造物は都市部や一部の郊外にわずかに残る程度であるが、それらがより新しく、より大きく立て替えられていく過程で現代建築の中心地となった。
歴史的に土地の高度利用の需要は、ビジネス・ディストリクトやセントラル・ビジネス・ディストリクト(CBD)に集中しており、数十年続いた開発の末、多くの高層ビルが林立する結果となった。マリーナ湾とラッフルズ広場の海岸沿いに高層ビルを浮き立たせた輪郭線を描き、その景観はシンガポールを代表する観光地であり、象徴する景観にもなっている。建造物の高さは280mに制限されているため、シンガポールで最も高いリパブリック・プラザやUOB Plaza及びOUB Centreの高さはいずれも280mである。しかし、2016年に完成予定のTanjong Pagar Centreはそれを超す290mであり、30年ぶりに最も高いビルが更新される予定になっている。 同様に西部のジュロン方面も急速に開発が進んでおり、住宅・商業施設・オフィスビルなどの建築が盛り上がりを見せている。
マーライオン公園 マーライオン ラッフルズ像 エスプラネードシアター・オン・ザ・ベイ オーチャードロード オランダ村(Holland Village) チャイナタウン リトルインディア セントーサ島 マーライオンタワーとマーライオンウォーク アンダーウォーターワールドとドルフィンラグーン カールスバーグ・スカイタワー シロソ砦 ユニバーサル・スタジオ・シンガポール ジョホールバル(マレーシア) ラッフルズ・ホテル シンガポール・フライヤー グッドウッド・パーク・ホテル シンガポール動物園 ナイトサファリ リバーサファリ シンガポール植物園 シンガポール国立博物館 アラブストリート イクィノックス クラーク・キー(シンガポール川) 国立蘭園 国会議事堂 最高裁判所 日本庭園・中国庭園 歴史博物館 日本占領時期死難人民記念碑 バトル・ボックス スリ・マリアマン寺院 Sri Veeramakaliamman Temple Masjid Sultan 富の泉 (Fountain of Wealth) サンテック・シティー ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ 自然環境
元々、熱帯雨林を開拓したシンガポールにはブキ・ティマ自然保護区(英語版)、ラブラドール自然保護区(英語版)、中央集水区自然保護区(英語版)(マクリッチー貯水池公園)、スンゲイ・ブロウ湿地保護区(英語版)の4つの自然保護区を設けており、ジュロンレイクガーデン国立公園の整備計画もある。
交通
自家用車
人口密度の高いシンガポールにおいて市内の交通渋滞は深刻な社会問題であり、政府も長年その対策には腐心しており、自家用車の保有、および利用には特に厳しい制限がなされている。
バス
公共交通機関のバスは、SBSトランジットとSMRTバスの2社が事業展開をしており、路線は市内のほとんどを網羅しているため、市民の主要な移動手段として定着している。
運賃は一般路線で乗車距離によりS$1.00-1.90となっている(EZ-linkを使用した場合、S$0.69-1.65に割引)が、通勤時間帯に運行される着席保証の「プレミアムサービス」や「バス・プラス・サービス」、SMRTバスが運営するセントーサ島行きの「RWSサービス」、一部停留所を停車しない急行サービスや「NR」というサービスナンバーがつくいわゆる深夜バスでは均一価格制や割増料金などが設定されており、多彩な運賃構造を持つ。バス停には時刻表は表示されていないが、バス停の名称は表示されており、スマートフォンアプリやWeb上ではバス停の名称やバスが到着する時刻を確認することができる(主要バス停では、次にバスが到着する予定が電光掲示板に表示されている)。バスの専用レーンが道路上の黄色の線によって決められており、一般車は指定時間中は進入禁止となっている。乗り継ぎ割引についても、地下鉄連絡やバス同士の乗り継ぎにおいて例外となるパターンがごく一部しかなく、3乗車目、4乗車目と連続した場合であっても、個別に条件を満たせば割引が適用されるなど、柔軟な運用がなされている。
タクシー
シンガポールのタクシーは、初乗り(1.0km)料金がS$3.20、その後は175-210mごとにS$0.20が加算されていく仕組みになっており、日本のタクシーと比較すると料金は安い。車種はヒュンダイ・ソナタやメルセデス・ベンツ・Eクラスが多いが、日本や香港と違い、後部座席は自動ドアではない。
グレードの高い車種になると初乗り料金が少し高くなる。たとえばヒュンダイ・ソナタはS$3.20だが、メルセデス・ベンツE200などはS$3.90となっている。
メーター料金以外にも、条件に応じて様々な料金が加算される。
ピークアワー:S$2.0 祝祭日:S$1.0 深夜および早朝:メーター料金の10?50%増し(時間帯で変動) チャンギ国際空港からシティへ向かう際の特別加算:S$3.0-5.0(時間帯で変動) 市内中心部特別通行料(ERP):S$0.50-4.50(概算、時間帯により変動) タクシー予約料 S$2.30(アプリで配車可) セントーサ島への入島:S$2~S$6(時間帯、曜日によって変動) 近年スマートフォンによって新規ビジネスとして頭角を現してきたUberやGrab Taxiなどの影響でタクシー会社は売り上げを落としている。しかしシンガポールのタクシードライバーはもともとタクシーの車をリースしてリース料をタクシー会社に支払うシステムのため、ドライバー自体には大きな影響はない。タクシー会社の車をリースしながらUberやGrab Taxiなどのアプリを使用して乗客を確保しているドライバーも存在する。
鉄道
LRT(Light Rapid Transitの略、新交通システム) 船舶
ハーバー・フロント 国際旅客ターミナル (IPT) ハーバー・フロント リージョナル・フェリー・ターミナル (RFT) タナ・メラ・フェリー・ターミナル (TMFT) チャンギ・フェリー・ターミナル チャンギ・ポイント・フェリー・ターミナル
航空
シンガポール・チャンギ国際空港(Singapore Changi International Airport) シンガポール島東部に位置し日本からの直行便も多数就航するこの空港は、東南アジア有数のハブ空港として多くの航空便が乗り入れており、国営航空会社のシンガポール航空やジェットスター・アジア航空の本拠地でもある。 シンガポールチャンギ空港をハブ空港とする航空会社
シンガポール航空(フラッグキャリア) ジェットスター・アジア航空 タイガーエア・シンガポール スクート シンガポール航空カーゴ シルクエア
国民
住民は、華人(中華系)が74%、マレー系が14%、インド系(印僑)が7.9%、その他が1.4%となっている。華人、マレー系、インド系からなる複合民族国家のため、公共メディア、文化一般に3系統の文化が共存するが、共生しながらもそれぞれ異なるコミュニティーを形成している。
先述の通り、シンガポール政府は民族問題に敏感であり、例えば、国民の9割以上が暮らすHDB(Housing and Development Board)住宅では、ブロックごとに住民の民族比率がシンガポールの民族比率と同じようになるよう、民族別に入居者数が配分されており、特定の民族同士で固まらないよう配慮されている。
シンガポールは、世界でも少子化が進んでいる国の一つであり、政府は労働力確保のため、移民を推進している。しかし、国民からの反発は根強く、一党独裁であるシンガポールでは異例の抗議集会が開かれる騒ぎとなっている。
2014年現在、シンガポール全人口のうちシンガポール国籍保持者は61.12%にしかならず、残りの38.88%は外国籍である。先進国以外から来た多くの外国人労働者は劣悪な環境を強いられているなど問題も多い。2013年12月8日には、シンガポールとしては約40年ぶりに暴動が発生したが、この切っ掛けはインド人の労働者が個人経営のバスにひかれて死亡した事故であり、その背景として不当に安く働かされている出稼ぎ労働者の不満があるとされる。
言語
公用語は英語、マレー語、華語(標準中国語=マンダリン)、タミル語(インド系に母語とする者が多い)である。これらの言語は平等に扱われ、学校教育でも、各民族語が英語とともに必須科目として教えられている。シングリッシュ、シンダリン(シンガポール式華語)など、それぞれの言語で、独特の発音や他言語の語彙・文法の混用などが見られる。
華人の間では、?南語や広東語、潮州語、客家語など中国語の各方言も母語としている人がいる。中国語は簡体字で表記されるが、繁体字の使用も見られる。簡体字の導入当初は、シンガポール特有の字体も見られたが、1976年以降中国大陸と同じ字体が実施されている(詳細はシンガポールにおける漢字参照)。1979年から華語普及運動(講華語運動、Speak Mandarin Campaign)が始まり、これ以降に育った若い華人には祖父母世代とのコミュニケーションに若干の困難を伴うことがある。シンガポール統計局によると、5歳以上の華人が家庭で最もよく使う言語として華語を挙げた割合は1990年には30.1%であったが、2000年には45.1%、2010年には47.7%に上った。中国語と英語を公用語とする点で共通する香港とは異なりシンガポール華人の名前は、日本語のマスメディアでは通常英文表記から音訳された片仮名で表記される。氏名の英文表記は必ずしも華語の発音によるものとは限らず、それぞれの祖先の出身地での発音が基になっていることが多い(「陳」を「Chen」ではなく「Tan」と表記するなど)。
マレー語が憲法上国語とされているが、儀礼的なもので、シンガポールがかつてマレーシア連邦の一員だったことの名残でもある。公式の場でもマレー語はほとんど用いられず、ビジネス、行政などでは英語が広く使われ、公共の場の表記や放送も主に英語が使用されている。空港や駅などの案内板、地下鉄の車内放送は英語を公用語とし、場所により中国語、マレー語、タミル語が併用されている。日本人観光客の多い場所では案内板に日本語が併記されている場合もある。華人やインド系でも英語を母語とする者(英語系華人など)がおり、教育でも初等教育から各民族語以外は英語中心に行われている(大学教育はほぼ英語のみ)。若い世代は大多数がバイリンガルあるいはトライリンガルであるが、古い世代では中国語などの民族語しか話さない者も多い。政府発行の公文書は基本的に英語だが、国語はマレー語、国歌もマレー語である。英語を表記する際には、イギリスの植民地であったことから、colourや、centreなど、イギリス英語が用いられる場合が多い。しかし高等教育を受けていても英米の母語話者のような英語を流暢に話せる人は少なく、独特の英語(シングリッシュ)を話す。2000年以降、これが問題として取り上げられ、論争が行われている。
シンガポールで話される英語は、独特の発音や用語法があり、シングリッシュ(Singlish)と呼ばれる。マレー語、標準中国語、?南語が混ざった英語であり、ピジン言語の一種とされる。発音の面から見ると、シングリッシュにおいて、「r」を「l」として発音することが多く、例えば「very」「already」がそれぞれ「vely」と「oleddy」になる。英語にない語彙もある。語彙のみならず、他言語の文法もそのまま英語に編入され、独特のシンガポール英語ができている。
シンガポール政府は「シングリッシュ」に対して否定的であり、正しい英語を話すことを国民に求めている。大学には、シングリッシュ矯正講座もある。2000年4月には「正しい英語を話す運動(英語版)」を開始した。
宗教
主な宗教は、仏教、道教、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教などである。
仏教は主に華僑系により、中国浄土教系が信仰され、全人口の32.5%を占める。華僑系は、道教の信仰者も多い(約8%)。 イスラム教は、主にマレー系住民(中華系・インド系も少なくない)により信仰され、全人口の約14%の信者を有する。 ヒンドゥー教は、主にタミル系住民により信仰されている(約4%)。 民族にかかわらずキリスト教が広く信仰されており、全人口の15%程度の信者を有し、カトリックとプロテスタントが1:2の割合となっている。 保健
世界でも最高水準といわれる医療制度を誇り、世界各国から医療観光者が訪れる。ユニバーサルヘルスケアが達成されており、公的医療保険は賦課方式ではなく個人別の積立方式であり、#中央積立基金がMedisaveとして運営している。シンガポールの医療制度の効率性は、2000年のWHO調査にて世界6位と評された。
政府が管掌する公的病院と自由診療の民間病院が存在するが、公的病院は政府により、誰もが安心して受診できるような安価な診療費を設定することが目標とされている。サービスの質を落とさぬよう、病院の運営組織は地域別に2分割され、競争原理が働くよう考慮されている。同一内容の診療でも、永住権を持たない滞在者には高めの費用が設定されている。
罰金制度
タバコのポイ捨て、交通違反はもちろんのこと、便所の水流し忘れや、紙屑一片のポイ捨てにも罰金や鞭打ち刑が科せられる場合がある。厳しい公衆道徳政策は、ときに「ファインアンドファイン(Fine and Fine)」「ファインシティ(Fine city)」「Singapore is fine country」とも揶揄される。罰金(英語: Fine)と綺麗(同:Fine)を意味する。Have a fine day という「ジョークTシャツ」も見かけられる。
また国内でのチューインガムの販売は、ポイ捨ての温床になる事から(医療目的を除き)禁止されている。このため、清涼菓子製品はメントスが一般的である。
文化
食文化
食生活は外食中心であり、シンガポール人が積極的に自炊をする事はほとんど無い。その理由は以前から商業都市であり、男女関係無く毎日仕事する生活をするシンガポール人が多いため、自然と時間のかかる自炊よりも外食で済ますことが好まれるようになったからである。また外食文化が非常に発達しており、多数のフードコートや、「ホーカーズ」と呼ばれる、大衆向け外食広場が充実している背景もある。一部の観光客向けホーカーズを除けばフードコートやホーカーズで提供される食事の値段は手ごろで、1食分の値段が3?5S$程度で済むメニューが多い。 なお食後のトレーは返却しなくてよい仕組みだが、返却棚の設備があるフードコートもあり、利用客は自分でトレーを返却することもできる。特に「エアコンのない場所などで食品残渣を放置すると鳥が食べに来るため、病気の拡散リスクに繋がる」とシンガポール公衆衛生協会から衛生マナーの悪さを指摘されている。
混合文化圏らしく、潮州・福建を起源とする華人料理、南インド系の料理、マレー系の料理に大別される。以下に代表的なものを挙げる。
世界遺産
シンガポール国内には、ユネスコの世界遺産リストに登録された文化遺産が1件存在する。
娯楽
英語と各種中国語、マレー語という東南アジアの主要言語を揃って使用することのアドバンテージを生かし、東南アジアの主な情報発信地の一つとしてポピュラー音楽やファッションなどで存在感を見せている。
土地が狭いことや、政府の規制が厳しいためもあり、国内に娯楽施設は少なく、若い世代は映画、クラブやビリヤード、スヌーカー、カラオケに興じることが多い。特にビリヤード場は都市部のそこかしこで見かけることができる。最近ではインターネットカフェが増加している。
中東部のゲイラン地区には国公認の売春地区がある。トランジット(飛行機乗り換え)で立ち寄る西洋人(主にアメリカ系)が中国本土やロシア東部の女性目的に立ち寄ったり、日本人が顧客の接待で立ち寄ったりするが、基本的にはローカルのシンガポール人が一番多い。トップレスダンスショーを披露するパリのキャバレー「クレージーホース」を政府当局が誘致したが、客足が伸びず、開業からわずか1年あまりで閉店される事となった。
結婚
中国文化圏であることから、結婚の際は夫婦別姓である。
スポーツ
国内では比較的サッカーとバスケットボールが人気である。
2008年よりF1シンガポールグランプリが行われており、F1史上初めてのナイトレースが行われている。 2010年にスタートするユースオリンピックの夏季大会の第1回大会の舞台である。 シンガポールにはSリーグと呼ばれるプロサッカーリーグがあり、日本からはアルビレックス新潟・シンガポールが参戦している。
祝祭日
日曜日が祝日の場合は、月曜日に振り替えられる。移動祝祭日については、2006年の日付である。2015年3月14日、トニー・タンは、シンガポール建国50周年を記念し、8月7日を特別休日に制定すると発表。
通信とメディア
性的表現に対する規制
性的表現に関しては厳しく、例えば雑誌のヌードグラビア掲載は厳しく規制されている。PLAYBOYは、名指しで持ち込み禁止されている。そのため、日本のグラビア付週刊誌などは、ヌード写真がある場合は、それを切り取った上で販売されている。
報道規制
人民行動党による独裁体制の弊害の一つとして、各種マスコミに対する報道規制がある。一例として、非政府組織(NGO)「国境なき記者団」が毎年実施している報道の自由度調査の結果、シンガポールは毎年きわめて低い評価を受けている。
2002年 (調査対象外) 2003年 166の国・地域で144位 2004年 167の国・地域で147位 2005年 167の国・地域で140位 2006年 168の国・地域で146位 2007年 169の国・地域で141位 2008年 173の国・地域で144位 2009年 175の国・地域で133位 2010年 178の国・地域で136位 実際、過去に政府に対する批判的な報道を行った記者が投獄された他、同じく批判的な報道を行った外国人記者が国外追放になるなど、「先進国」らしからぬ前時代的な報道規制が内外から大きな批判を浴びている。標準中国語(マンダリン)以外の中国語の方言をメディアに載せることは基本的に禁じられている。そもそも、リー・シェンロン首相の妻が社長を務める政府保有投資会社テマセク・ホールディングスが、地上波報道局Channel News Asiaなどを保有するメディアコープの100%株主であることなどからも、政府に対して批判的な報道は規制されていると言える。
2013年6月には、インターネットのニュースサイトに対する免許制を導入する。この免許制については、シンガポール国民の間で、政府による検閲だと反発する動きがあり、デモなどが行われている。
教育
シンガポールには、インターナショナル・スクール、日本人学校、ローカル校とあり、シンガポール人の一般家庭は英才教育を行うことで有名である。行政機関は教育省(Ministry of Education)で、国の人的資源を最大限に活かすという方針のもと歳出予算が毎年常に全体の2割以上を占め、国防省に次ぐ規模である。 二言語政策のもと二ヶ国語教育が一般的であり、能力主義、実学主義を徹底しており、教育熱心な国として知られる。一般的な進路は、初等教育(Primary. School 6年間)、中等教育(Secondary School 4~5年間)、大学準備教育(Junior. College 2年間)から大学(University 3~4年間)というコースである。
大学の教育水準が非常に高いことでも知られる。シンガポール国立大学(NUS)、南洋理工大(NTU)、シンガポール経営学院大学(SMU)などが有名である。2016年4月、イギリスの教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が発表した創立50年未満の大学の世界番付によると、シンガポールのNTUは2位に浮上した 。またOECDによる「15歳の時点での国際学力比較ランキング」では2015年に世界トップに上った。大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds)」が2015年9月に発表したランキングでは、NUSが12位、NTUが13位に入りアジアではトップとなった。(なお同調査では京都大学は38位、東京大学39位)
シンガポールのロースクールはNUS、SMUと2箇所あり、2017年にはSIM大学において新たなロースクールを開校する予定。司法試験の受験資格を得るためにロースクールの卒業が条件となる。
ITE(Institute of Technical Education)は技術や技能を学ぶ国立の教育機関で、中学校を卒業した生徒たちの進学先の一つとなっている。ITEは1992年に創設され、2016年現在3つの学校を持ち、工学から機械技術、経済・経営、旅行、調理、接客まで多様な専門実習を1~2年間受講できる。
シンガポールでの教育環境を目的に外国人が世界中から移住してくることでも知られ、著名投資家のジム・ロジャーズは娘の教育のために2007年に渡星している。また、隣接するマレーシアからシンガポールの学校に通う「越境通学」も頻繁である。
現地には日本人学校がクレメンティとチャンギに2校ある。他にもインターナショナル・スクールやローカル校に通う日本人もいるが、学費は高騰している。
※ 参照元:https://ja.wikipedia.org